偶像のレクイエム “Requiem for a Falling Star” ネタバレあり

Lieutenant Columbo

あらすじ

子役時代から活躍する大女優のノーラは付人のジーンが有名人のスキャンダルを暴いて荒稼ぎし、ノーラのスキャンダルを掴んでいる作家のジェリーと交際を始め結婚を申し込まれたと告げられる。

自身の秘密をこれ以上ジェリーに掴まれるのを恐れた大女優ノーラは、ジェリーの自宅に先回りし帰宅前に彼の車のガレージにガソリンをまき、車が駐車されたタイミングを見て火をつけ殺害しようと試みた。

だが車に乗っていたのは付人のジーンだった。

ジーンの死を告げられショックを受けた大女優のノーラはレストランで気絶してしまうのだが、この事件にはまだ裏があった。

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この俳優さんが凄い

アン・バクスターさんハスキーなのであの時代の女優さんらしい上品な発生方法ながら他の方とはちょっと違うねっていう独特の個性を声にも持ってらっしゃいましたね。

あとラストシーン。

ずっと大女優然としてらしたシーンではドアは全部コロンボ警部が開けていたのですが、逮捕が確定した最後のシーンではコートの羽織り方が適当すぎて警部に左の袖をなおされている以外は全部自分で率先して動いています。

もはやこれまでとなった大女優が最後は毅然と次の荒波に向かっていくシーンでは自ら部屋の電気を消しています、その切り替えをしっかりご自分の中で台本咀嚼してご自分のものにされてらっしゃいますね。

あと役所わかんないんですけど撮影所を買った社長さんかな?ケヴィン・マッカーシーさんの存在感いいですね。

なんかランバ・ラル見てる気分です。

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この声優さんが良い

そのケヴィン・マッカーシーさんの声聞いてると吹き替えの方、この声聞いたことあるなあと思ってたら未来少年コナンのレプカ役の方だそうです。

ああ、そうか風の谷のナウシカでクロトワやってた人とは別の人だったか!と思ってよく調べたらどっちも同じ方でした。

この悪役かつ司令官とか組織のトップとかが似合ういい声ですよねこの人。

あとノーラ役の声優さんが最後の最後、犯罪をコロンボ警部に告白するシーンはすごかったですね。

あそこはよく聞いてみてください。

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それって私の感想ですよね

もう何処の誰の話かは詳しくは書かないです。

っていうのも時間経過とともにこの話も対象者が変遷しながら同じ話が今後繰り返されるだろうからです。

つまり対象を曖昧にしておくとこの話、今からここに書くことはずっと長持ちするのです。

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キャスティング・カウチの話が出てくるんですよ・・・

キャスティングカウチっていうのは平べったくいうと「枕営業を権力者が俳優に要求し、断れば仕事を与えられず、受け入れれば仕事はもらえるが大事なものを全てを失う」っていう例のアレです。

最近この手の話が盛んに言われてますよね。

で、これあちこちではびこってるって話なんですよ。

しかも俳優さんも歌手もこの被害に遭ってて性別も男女問わないんですね。

男性も女性もその人の性的な何かを提供しないと仕事がもらえないし、提供するといい仕事がもらえる代わりに自らの大切な何かを失うことになります。

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キャスティング・コーチ(coach)と言い換えられている

NHKがこの話をそのまま日本語に翻訳して放送することは当時しませんでした。

なぜかは私にもわかりません。

登場シーンはコロンボ警部が「電話を借りたい」という嘘でジェリー・パークス氏の仕事部屋に入るシーンで発生します。

ジェリー氏は言います「famous casting couch」有名なキャスティングカウチと。

ここを吹き替え放送では「アルの有名なキャスティング・コーチの件」と声優さんがセリフを言います。

これを受けてコロンボ警部は「新人にコーチするあれ」と応じます。

そしてこれはノーラという奥さんがいながら行われた浮気であるという結論付です。

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問題の根深さを感じる

キャスティングカウチって当時訳されても誰もわからなかったかもしれません。

実際、死者の身代金ではコロンボ警部がルートビアを注文しているのですが当時の日本人にルートビアはわからないので翻訳ではグレープジュースに置き換えられています。

今回もそれかもしれないので真相はわかんないです。

ただ、原語の方だとノーラやジェリーから以下のような話が出てきます

  • 撮影所の所有者であるノーラの夫に枕営業を持ちかけられて断れなかった若い女優がたくさんいた
  • ノーラが亡くなった夫と結婚した理由は「キャリア(女優業)にプラスになるから(愛していたからではないという意味)」
  • 枕営業の話は映画業界でもないコロンボ警部にとっても「聞いたことのある話(Yes, I’ve heard of that term)」

こういう嫌な話は芸能界でも一般社会でも無数にあり誰も手を下してきませんでした。

それがここ数年で大きく変わろうとしています。

1970年代にもこの問題を取り上げ小さな抵抗を試みた人達がいた、このドラマはそういう側面もあったのかもしれませんね。

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ついでの話

キャスティングカウチの少し後で12年と訳すべきところを13年と誤訳?しています。

原因はわかりませんが翻訳家の方からのメッセージなのかなあなんて邪推してしまいます。

だって英語で11から19って結構特徴的でしょう?

固有名詞が存在するし

Twelve
Thirteen
あの当時にテレビドラマの翻訳が出来ちゃうレベルの能力がある方がこれを間違えるってあんまり合理的な気がしないんですよね。
カウチをコーチと訳させられたことへのなんかのメッセージ、いやこれはほんと、私の感想、邪推もいいとこですね。
すみません忘れてくださって結構です。
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LINK

刑事コロンボ

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見どころ(ネタバレ)

ネタバレ有りなので読みたくない方もいるでしょうから今回初の試みで、この項目をページ最後の項目にしてみました。

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今回は視聴者を騙そうとします

そこまで複雑な仕掛けでもないのですが話が視聴者主観だと以下のような思考の変遷があり、ジーンの目的が見えにくくなっています(ジーン殺害が目的だったのは序盤で判明するんですが、それによって何を成し遂げたかったのかは最後の方までバラさないわけです)

  1. 女優ノーラは付人ジーンとジェリーが交際していると知らされ、ジーンを奪われないようにジェリーを殺そうとするが間違って付人ジーンを殺してしまった
  2. 付人ジーンの車はパンクしたのでジェリーの車を借りたが、直前に女優ノーラがジーンの車の前から走り去るシーンがある(ここでジーン殺害が目的であった事がわかる)
  3. コロンボ警部の調べではジーンの車は空気が抜かれていただけでパンクしてなかった
  4. 女優ノーラがジェリーに会いに行き口論、ノーラはジェリーに金銭を要求され強請られており殺害動機が無いわけではない
  5. 女優ノーラはジェリーから付人ジーンへの手紙を隠匿、二人が交際していることは実は前から知っていた事がわかる
  6. 女優ノーラがジェリーに脅されているネタをコロンボ警部に告白、しかし撮影所の所有会社は事件よりずっと前からこの事実について和解済みだった(脅しに使えないのに4で口論している)
  7. ラスト コロンボ警部が事件の真相を突き止め女優ノーラに告げる

※2でジーン殺害が目的だったことがわかるには冒頭でのノーラとジーンの会話も関連します、繋がりで見ればここでわかるはずだしわざわざ二人が密会する日にやらなくてもいい、だってもし間違って殺害する可能性を排除したいならジェリーが一人のタイミングでないと車内にジーンが同乗している可能性を排除できないからそもそもおかしい。

刑事コロンボの基本フォーマットである犯人が先にわかっている、犯行を先に視聴者に見せるは踏襲していながら事件の真相、裏側の人間模様や動機は最後まで見せずに視聴者を混乱させようとしています。

この点でこの回は

  • 刑事コロンボ特有の面白さ
  • 通常の推理ものの面白さ

この両者を両立させることに成功しているわけで、上手い回かもしれないです。